投資・トレードの入り口としてはインデックス投資というのが王道かと思います。
そこから、コア・サテライト戦略という用語を知り、
個別株投資を始める方は少なくないはずです。
この段階で、
「個別株投資や短期トレードは決して簡単ではない」ということを
知りながら、投資・トレードの道を歩み始めます。
もちろんインデックス投資にはない、投資の面白さを感じることは、
個別株投資を続ける理由の一つではありますが、
最も大きな理由は、リターンを求める気持ちではないでしょうか。
この気持ちが大きくなると、
どんどん短期売買やレバレッジをかける方向へと移ったり、
FX・先物・CFD・オプションと、
短期間のトレードで大きな利益を上げることを望むようになります。
すると、投資・トレードの「いばらの道」がその正体を現します。
売買の優位性の確保や売買技術、メンタル管理などの
総合的なスキルが身について、ある水準まで突き抜けないと、
長い間、大きな浮き沈み・停滞・破産を経験することとなります。
数年短期売買を経験して、パフォーマンスがすぐれず、
振り返ってみれば、レバレッジを掛けないで長期投資をしていたほうが、
十分資産を増やせたということはざらにあるわけです。
「インデックス投資は金融リテラシーを高めれば、多くの人が再現性高く行える。
長期投資は、優良な銘柄の選定と株式市場のサイクルを忘れなければ、
損をすることは少なくなる。
短期売買は、値動きのノイズに翻弄され、ノイズはレバレッジによって増幅され、
お金を稼ぐどころか失うことが多い。」
というのが各投資の「難易度」としてよく言われることではないでしょうか。
「難易度は上げたくない。けれど、パフォーマンスは欲しい」という、
気持ちの綱引きが投資家・トレーダーには発生します。
短期売買にいったんのめりこんでしまうと、
高いパフォーマンスをあきらめきれなくなります。
すると長期投資は行えず、短期的視野にとらわれ続け、
改善のないまま、結果的に無為な時間を過ごすことになります。
(このプロセスを経験して、
底つき感から投資家・トレーダーとして大成する人はよくいます)
少し、短期売買の視点から長期投資を捉えなおしてみたい思います。
インデックス投資がなぜ簡単かといえば、
それは長期的に見て右肩上がり
(あるいはドルコスト平均法によって、投資を始めた価格と同値でも含み益が出る)
と思われ、
価値が0にならないものに対して、
レバレッジを掛けず、
金融リテラシーがあれば損切行動は一切しなくてよいことが分かっており、
ドルコスト平均法で買い付けるため時間分散され、
エントリータイミングを図らなくていいからです。
配当は再投資されるため複利で増加し、
コストはインデックスファンドのため低コストです。
そして、勉強コストが低いため、仕事や家庭が忙しくても運用可能で、
仕組みを作ってしまえばほぼなにもしなくてもよく、
時間が味方しています。
これが、難易度の高い投資・トレードになるほど、要件が欠けていきます。
個別株は右肩上がりであるとは保証されない。価値は0になることがある。
価格やファンダメンタルを常にチェックする必要がある。
ショートをしたり、レバレッジをかけた場合、必ず損切りを決めなければ破産する。
時間分散は、リスク管理をしたうえで「買い増し」という形で行う必要。
スプレッドと売買手数料は、取引すればするほどかかかる。
オプションの買いや信用取引の買い、
時間を敵に回している。
ギャンブルでカジノがわずかな「エッジ」で大儲けしているように、
これらの要因は、自身の短期売買の状況を不利になるよう、
1つ1つが、取引の優位性を大きく削り取っていきます。
「個別株や短期トレードで勝てるようになるにはどうしたらよいか」
というよくある質問に対して、
「レバレッジを下げるかかけないようにする。
時間軸を長めにして、売買回数を控えめにする。
テクニカルだけでなくファンダメンタルも分析も行い、勉強する。
運用資金は大きく、リスクは小さく。」ということがよく言われます。
さきほどのアゲインストな要因をできるだけ低減させた、一般的な回答です。
これに納得できないとき、
おそらく「パフォーマンスや資金効率の低さに納得できない」という気持ち、
できるだけ努力せずa楽な取引を行いたいという気持ち、
「お金がゆっくり増えるのを待てない」という気持ちなどが、
葛藤として発生していると思われます。
これらの気持ちは、
投資・トレードの成績・スキルの習得・総合的な成長を一貫して邪魔します。
なにはともあれ気持ちですでに負けているというのは、
残酷ですが、あるのです。
もし、そういう葛藤を抱えていた場合は、それは冷静に精査する必要があります。
逆を言えば、葛藤の解消が、
自身の投資・トレードに非常に大きな向上をもたらしてくれる可能性があります。
「年100%の利益を稼ぎたい」という思いを持っているのなら、
自分ではなく、喫茶店やファミレスで友人が自分にそれを打ち明けたら、
自分はどう思うでしょうか。
「非現実的だ」と思うでしょうか。
「それを達成するには、非凡な努力が必要だね」と思うでしょうか。
控えめなアドバイスで、「ちょっと目標を落としてみたら・・・」と言うでしょうか。
投資・トレードは、「難易度」を覆い隠す性質があります。
それは、アマもプロも同じ場に参加できるということです。
そして、結果は統計的・確率的なものであるということです。
スタイルやゲームのルールは自由、ただ利益を上げるという目標は一致してます。
この環境では、
「自分も一気に一流の所作や正しい投資行動を行うことができる」という
勘違いを引き起こしやすくなります。
本を読んだ。知識を身につけた。
けれど、実践を繰り返さなければわからないことはたくさんある。
それを自覚してもなお「一流」になることは難しい。
「一流」にならなくても儲かってしまうこともある。
リスク管理を怠ったり、誘惑で大きなポジションを持って、破産してしまう。
長期で生き残れなければ、
一時的に大きなパフォーマンスを出しても意味がありません。
けれど、「自分はそういう勘違いをしていない。努力はしている。
自分だけは落とし穴にハマっていない」と多くの人は思っています。
長期投資でも短期投資でも、ぜひ味方にしておきたいものがあります。
それは「時間」です。
「とても基本的なことだ」と感じたでしょうか。
さきほどの文脈では、金利などの取引コストの面で、
「時間」は短期売買ではアゲンストになることに言及しました。
それでも「時間」を味方につけるということはどういうことでしょうか。
まずは長期的視野という意味での「時間」の概念があります。
長期投資であれば、文字通り経済の成長や銘柄の長期的企業価値向上を
視野にいれるということですが、
短期売買の場合は、繰り返される売買行為の結果がどう帰結するのかを
忘れずにいるということになります。
一つ一つの売買に入魂するだけでは長期的視野を欠いています。
パフォーマンスを求めつつも、「焦らない」というのは、
気持ちの上ですでに「時間」を味方につけています。
その気持ちによる投資・トレード行為の長期的帰結は、
高いパフォーマンスをやみくもに求めている人とは全く異なってくるでしょう。
二つ目に、「時間」を味方につけることによる「複利」のメリットを享受できます。
長期投資の場合は、配当や銘柄の企業活動による再投資を主に指します。
短期売買の場合は、
複利は主に「運用資金全体の〇%のリスクを取り、〇%のリターンや損失が出た」
というパフォーマンスを指し、そのための資金管理とセットとなっています。
この場合、複利はメリットだけではなく、デメリットも存在します。
大きな損失を出すと、
元の資金に戻すのはそれ以上の大きなリターンが必要ということです。
そのため、短期売買では「いかに大きなドローダウンを出さないか」ということが、
重要になってきます。
その上で注目したいのは、複利の場合、一つ一つの利益が小さくとも、
運用資金は雪だるま式に増える性質を持つということです。
時間をかけ、複利運用できるならば一発大勝負をしなくていいのです。
複利の効果により、パフォーマンスが年数%違うだけで、
長期の運用資金の増加スピードが違うことは、長期投資では明白でしょう。
短期売買の場合、
「数年でFIREできるだけの金額を稼ぎたい」という
強い気持ちにとらわれることがあります。
ただ、SNSでも、ベテラン勢は株投資なら10年は続けていますし、
FXでも5年は続け、その中で複利運用をした方が大勢ではないかと思います。
(仮想通貨はリスクを取った方が多い印象ですが、
少額が何十倍になったという、資金管理的にも問題ない売買をした方も、
少なくないと思っています)
勝負できる市況で、大きめのリスクを取るというのは、
勝ち切るという意味で非常に重要な概念ですが、今回は割愛します。
ただ、資金管理の範囲でトータルプラスの取引をある程度長い「時間」継続するという
ことは、複利運用にとって非常に相性の良いことであり、
「時間」を味方にして結果的に大きな資金増加につなげることができるのです。
三つ目に、ポジションを小さくして長期保有しやすくするというのは、
「時間」を味方につけます。
これは、「長期投資が短期売買より優れているとされる」点と共通する部分です。
トレンドが発生した場合、短期売買でガチャガチャやるよりも、
もう少し長めの時間軸でトレンドに追従したほうが、
取引負荷も資金効率もパフォーマンスも結果的に改善するという意味です。
短期売買で損が出たポジションについて、
時間軸を長めに変更して塩漬けにするということではありません。
「短期売買の大きなロットで、長めの時間軸のトレンドをすっぽり取りたい」
という欲は発生します。
しますが、それは運用資産に対する損益ボラティリティの観点から、
本質的に難しいことです。
FXのスキャルピングで100万通貨で取引することはできたとしても、
同じ運用資金のままそっくりそのままデイトレでも100万通貨を取引できるかどうか。
ましてや、キャリートレードで100万通貨のポジションを持てるかどうか、
ということを考えるとよいかもしれません。
「難しい」と表現すると「反面可能だ」と思いがちですが、
これはタフなメンタルになったから可能だという意味ではなく、
「破産の確率を引き上げてもよいのであれば可能だ」という意味での「難しい」です。
これが理解できると、
大相場やトレンドを大きなロットのまま勝負をするというような、
無理をしなくてよいことに気づきます。
そこには、短期売買ではなかなか得難い要素である「安定感」があり、
それを自身の売買に生かすことができるのです。
「安定感」は一般的には、大きな資金の運用に存在します。
パフォーマンスは年数%ではあるけれど、
大きな運用資金から得られた運用益の絶対値は、生活するには十分である。
という安定感です。
この安定感には、「無理をしなくていい」という余裕が含まれています。
短期売買では少ない資金でパフォーマンスを追い求めるため、
この余裕はあまりありません。
しかしながら、これはメンタルの問題ではなく、
資金管理と取引時間軸に合わせたポジションの大きさの問題です。
多くない資金で、長い時間軸で大きなポジションを持ち続けるということは
無理が生じるため、
そうならないようポジションを落としておくことは、
余裕と安定感、トレンドを長くつかめるという、
「時間的メリット(時間を味方にする)」を享受できるということなのです。
以上、インデックス投資の話題から入り、
短期トレードで時間を味方にする重要性を書いてみました。
高いパフォーマンスは、短期売買の華です。
どうしてもつかみたくなります。
けれど、自分のスタイルに行き詰まりを感じた時、
そのパフォーマンスへのこだわりが大きな障壁となっていることは
大いにありえます。
「時間を味方にする」投資・トレード姿勢を持つことは、万能薬の一つです。
短期売買ではなかなか難しい要素ではありますが、
今回の記事のように、活用できる部分はいくつかあります。
そしてその効果は決して小さくありません。
ぜひ、取引を振り返り、取り入れてみてください。
私も、この「時間を味方にする」ことを再確認してから、
大きく取引姿勢が変わりました。