投資・トレードでは、
「トータルで勝つ」ことがエッセンスであると、よく言われます。
この言葉の前提には、確率論があることが多いです。
優位性のある取引をし、期待値を積み上げていけば、
取引の数をこなすことで、最終的には利益になるということです。
一回一回の結果はそれほど重視せず、
期待値があれば累積的な結果は正に傾きます。
たまに、「ビジネスとしてのトレード」というキャッチコピーを聞くことがあります。
これの意味するところは漠然としている部分もありますが、
・損は必要コストである
・ギャンブルではなく仕事をするように、一連のトレードの流れを洗練させる
というところを意味するのではないでしょうか。
「損は必要コストである」というのは、
先ほどの確率論的な立場から見ると「確固とした損」のように思えて、
違和感を感じる方もいるのではないかと思います。
しかし、「ドローダウン(損)は必ず発生するものである」という事実を踏まえると、
損をコストとして受け入れることで、
ドローダウン後の利益成長曲線を得ることができ、
それは一定のリスクを負うビジネスであると主張することは可能です。
ここで「トータルで勝つ」をイメージしやすくする恒等式を考えました。
トータルの利益
=
プラン通り得られた利益 ー プラン通り支払った損失 ー 取引手数料
+思わぬ利益 ー 余計な損失
至極当たり前のように思えます。
しかし、長く続けられるトレードをするとなると、
恒等式の各要素の吟味が非常に重要だということが分かります。
「プラン通り得られた利益 ー プラン通り支払った損失」は、
期待値のあるトレードをその通り行うことで得られます。
ここに、「ー 取引手数料 +思わぬ利益 ー 余計な損失」の要素が加わります。
取引手数料(スプレッドを含む)は必ず差し引かれます。
このコストは決して安くありません。
これを軽視することは、トータルの利益を軽視することになります。
「思わぬ利益」はうれしい利益かもしれません。
ただ、それは安定性がなく、どの期間のトータルの利益もプラスにするために、
この利益に頼ろうとするのは無理だということが分かります。
「トレードは技術である」ということを考えた時、
「プラン通り得られた利益」と「思わぬ利益」の間には、
グレーゾーンがあります。
リスク管理や確度の高い取引を行うことで、
通常より大きめの利益を無理のない範囲で得ることはあるからです。
技術でトータルで勝つということは十分あり、それを追求する価値は大いにあります。
「余計な損失」は、ポジポジ病、プラン以外の取引などで発生した損です。
これはコストではありません。
式を見れば、
トータルの利益をプラスにすることの足を引っ張り、難しくすることが
分かります。
「余計な損失」は、取引の中毒性の面からよく指摘されます。
しかしながら、「トータルで勝つ」という時に、
非常に足を引っ張る要素であるということは忘れがちです。
ここの点を深く理解するだけでも、
トレード姿勢を改善することができるのではないでしょうか。
今回は簡素な内容ではありますが、
「トータルで勝つ」ことについて、整理をしました。
先ほどの恒等式を意識するだけでも、確率論に翻弄されたり、
トレードの各要素を別個に考えてしまって、全体を俯瞰できないなどの
難しさを少し取り払うことができるのではないでしょうか。
:追記となります。
ここで注意しなければならないのは、
リスクを管理した上でプランを立てたのにも関わらず、
それを守れずにガチャガチャやって、プラン外の損益を出した場合です。
4つのケースが考えられますが、特に以下の2つは注意が必要です。
プラン通りやっていれば利益になっていた例で、
プランを守れなかった損失を出した場合は、
恒等式の「プラン通り得られた利益」を削り、「余計な損失」を出すという、
2重の意味でトータルプラスの足を引っ張っています。
プラン通りやっていれば損失になっていた例で、
プランを守れなかった利益を出した場合は、
「プラン通り支払った損失」を削り、「思わぬ利益」を出しているため、
一時的にはトータルプラスになりますが、「思わぬ利益」は再現性がないため、
継続して安定したトレードを行うことができません。