ニュースを追うということは、相場と向き合うための一つの手段です。
このことで投資・トレードから利益を生み出すことは可能なのでしょうか。
日々のニュースは「織り込んでいく」という表現がよくなされます。
これは効率的市場仮説の影響を大きく受けているためです。
織り込んだ後には取り得る利益もなく、
織り込みもアルゴリズムによって瞬時に行われており、
人間では困難な面があるとされています。
ニュースに振り回されるというデメリットもあります。
「噂で買って、事実で売る」という言葉通り、
ニュースに先行して、狙った値動きがすでに展開されていることもあります。
「こういうニュースがあったからこうなるはずだ」というトレーダーの期待は
往々にして裏切られます。
また、ノイズニュースに随意反射し、
ポジションを持ってしまうと言うこともあり得ます。
毎日毎日楽観と悲観が交錯する市況において、
わけもわからず損切りを繰り返してしまうという状況です。
それなのに、ニュースのキャッチアップがなぜ重要なのでしょうか。
それは、ニュース後の市場の反応と変化が存在するからです。
以下に、そのメリットを列挙したいと思います。
行き過ぎをとがめる動きや、調整といった相場の反応
アルゴによる一方向的な値動きや、
過剰なセンチメントが引き起こすクライマックスに対して、
「行き過ぎ」が生じます。
反動の値動きや、その後のボラティリティのある中でのレンジに関しては
短期的なトレードが可能でしょう。
織り込みとは異なる、フィードバックによる相場の変化
市場参加者は多層に折り重なるフィードバックループの中にいます。
「あの参加者はこう考えていると、私は考えているが、
それをこの参加者は知っているからこうなるだろう、と私は考えているが…」
というループ的な思考が存在します。
逐次変化する値動きと、与えられるニュースは、この思考に影響し、
ときおりいずれかの市場参加者に大きなフィードバックを与えることがあります。
パニックがパニックを生じさせたり、
スマートマネーの買い集めを察知したトレンドフォロアーが大きな買いを始めたり。
こうしたことで、市況の変化を察知したり、そのままトレンドが発生するなど、
利益を生じさせる値動きとなりえます。
ファンダメンタルの変化の察知
ニュースの多くはそのまま過ぎ去ってしまったり、
ちょっとした影響しか残さないノイズが多いですが、
時にはボディブローのように効いてくるものもあります。
(すぐに影響を与えるものはアルゴが反応します)
それがファンダメンタルの変化に影響を与えるニュースです。
最近の株価市況のベアマーケットはインフレ抑制を目指した金利上昇によるものです。
FRBが金融引き締めを開始した時、
S&P500は一瞬で年初来-20%の値動きになることはありませんでした。
ファンダメンタルから考えると、明らかに下落要因のニュースであり、
株投資からキャッシュへ資金を逃がす、大きな転換点でした。
そのようなニュースを逃さないことが、株式投資のリスク管理の面でも、重要です。
真実とは乖離のあるニュースをつかむため
引き続き、最近の株価市場を例に挙げます。
アメリカのインフレ率が上がった時、
FRBは「インフレは一時的」という声明を発表していました。
しかし、現状のように、実際は大きく物価は上がり、
強く金融引き締めを行わなければなりませんでした。
これは「真実とは乖離があった」ということになります。
真実は誰にもわかりません。もしFRBが初動で金融引き締めを行っていれば、
現状よりも適切にインフレ抑制できていたかもしれず、
それが真実になりえた世界もあり得るわけです。
ここで役立つのはグローバルマクロの考え方です。
コロナショック後、大規模な金融緩和が行われマネーが市場に出回りました。
インフレを加速させる大きな要因でした。
これをスルーして、「インフレは一時的」と主張するのは無理筋だと、
グローバルマクロ的には発想することができます。
そうすることで利益をつかむために何を取引すればよいか、
いつ取引すればよいかを考えることができます。
さいごに
ニュースを追うと言うことは、センチメントをつかむことです。
ただやみくもに追っても、センチメントに振り回されることになります。
上記のいくつかのメリットにあるように、
投資・トレードでリスク管理を行い、何をどのように取引して利益を出すかは、
このニュースから発生するセンチメントをうまく利用することで、
よりクリアに見出すことができます。