今日は日銀政策決定会合がありました。
会合前は「イールドカーブコントロール撤廃があるのではないか」と噂され、
円高・株安の予想が出回っていました。
ところが、日銀の「当面の金融政策運営について」の発表は、現状維持。
大幅な円安、株高となりました。
私は日経225のプットオプションを買い、下落に備えるポジションでしたが、
損切りになりました。
ここでタイトルの内容を改めて考えることになりました。
「コストを毎回支払って重要事象に備えるポジションは有効なのか」と。
例えば日銀政策決定会合と新総裁決定で、
何かしらの値動きに備えるとします。
ここでは株安に賭けるとして、50円のプットオプションを買うこととします。
最大利益になればオプションの価格が倍の100円以上になり、
外れれば最悪半額の25円になるとします。
このポジションをとる機会は、今回の会合を含め
1・3月の会合、新総裁発表、4月新総裁下での会合と、
全部で4回あることになります。
全部の機会で損失を出せば、最大25円×4=100円のコストとなります。
一方、最大利益は最大50*4=200円以上と計算上なります。
このようなポジションには前提があります。
「備えたことで、実際その万が一が起きた時に大きな利益になること」です。
コストをイベント(同種の事象とは限りません)毎に支払い、
結果としてそのうちの一回が大当たりし、
資産を大きく増やせれば、この戦略は大成功とするということです。
勝率とリスクリワードが分かれば、
そのトレードがトータルプラスを目指せるものか判断がつきます。
しかし、イベントトレードの性質上、
「備えること」が本当にトータルプラスになるかどうか、
それはすべて終わってからしかわかりません。
また、結果として資産を大きく増やすということは、
それなりのリスクを毎回取るということになります。
重要イベント毎に、それなりのリスクを取っていたら、
コストを払い続けることになり、
それは破産してしまうのではないでしょうか。
しかし、万が一が起きた時の値動きにはとてつもない魅力があります。
例えばロシア・ウクライナ戦争の勃発は、
誰もが抱いた「戦争は起こらないだろうと」という考えを裏切るものでした。
ゴールドは地政学上の不安から勃発前から少し上がり、
勃発後は急騰しました。
ロシアの通貨・株価指数は暴落。
ポジションを持っていたトレーダーは爆益を報告しました。
コロナウィルスの流行は、
世界同時株安を引き起こしました。
株式のパニック売りが出る状況は、まさにプットオプションの独壇場でした。
10年に1回あればいいというアホボラと呼ばれる、
オプションのインプライド・ボラティリティが急騰する局面になりました。
ここから考えられることは、
毎回それなりのコストを支払うよりは、
「非常に重要な局面に対してだけ大きなリスク・コストを支払う」ことの方が、
「万一に備えるポジション」として有効なのではないかということです。
「万一に備えるとは毎回備えるという意味ではない」ということです。
どうやれば「非常に重要な局面で備えること」が可能になるのでしょうか。
一つ目は「起こる前にチャート上で有利なポジションを取っておく」
ということがあります。
コロナショックの場合、日経平均は高値天井圏にありました。
コロナウィルスが中国で広がったというニュースの戻り高値で売っていたとしたら、
中国以外にウィルスが広がったというニュースがあった時点で、
利益の出ていたポジションであり、
余裕をもってホールドできていたのではないでしょうか。
二つ目は「万が一の事象が織り込まれていないときにポジションをもつ」
ということがあります。
重要事象に対しては、センチメント・コンセンサスが存在します。
もし万が一の事象が織り込まれていれば、それは事前に値動きとしてあらわれ、
事後になっても大きな値動きにはならないかもしれません。
むしろ、材料出尽くしとなり逆行する可能性があります。
サプライズが大きければ大きいほど、
その順行する値動きは大きくなり、備えていた甲斐があるということです。
三つめは、「ペイアウトの非対称性を利用する」ということです。
一連のトレード結果のリスクリワードは結果が出るまで不明ですが、
利益の出方は一部コントロール可能です。
(イベント時は流動性がなくなるため、逆指値がおもいっきり滑りますが)
特にオプションの買いポジションは、ペイアウトの非対称性があるため、
それを戦略に利用することも可能です。
損切りコストを圧縮し、利益を伸ばせるのであれば、
トータルプラスへと技術的に導く余地があるということになります。
トレーダーの心理的要因についても言及します。
大きなイベントに対して、
トレーダーは「取り残されなくない。市場に参加したい」という欲求に駆られます。
いわゆるFOMO(取り残され不安)です。
この心理に振り回されると、余計な取引をしてしまいます。
毎回重要イベントに備える・参加するということが、FOMOに起因していないか、
十分チェックする必要があります。
最後に、「あえて重要事象に備えず、参加しない」という選択肢があります。
事象による市場の反応、ファンダメンタルの変化だけを参考にするという選択肢です。
事象の前に備える(あるいは上下に賭ける)市場参加者、
アルゴリズム取引による事象の織り込み、
事象後のボラティリティをトレードする市場参加者
イベントがあるごとに上記の「織り込み」ラピッドサイクルが繰り返されます。
しかし、そうではないところにも投資・トレードの源泉はあるような気がしています。
立て続けに起こる事象を俯瞰し、
要となる流れをつかんでポジションを取る。
その方が毎回コストを支払うよりも、
落ち着いてより大きな利益が望めるのではと考えています。