投資・トレードにおいて、よく言われることに
「難しい局面ではやらない。イージーな局面まで待つ」ということがあります。
この一言は、うんうんとすぐ頷ける一方、
いざ取引すると、なかなか言葉通りにはいかない事実と向かい合うことになります。
この理想と現実のギャップはどこにあるのでしょうか。
「イージーな局面」の定義を模索することで、
この問いの答えを見つけてみたいと思います。
投資・トレードにおいて、お金が拾えるほど簡単なことは、ほとんど存在しません。
何かしらのリスクは必ず存在し、売買においてはそのリスクを負っています。
「イージーな局面ならお金を簡単に拾える」という幻想があります。
しかし、以下の例を考えると決してそうではないと考えることができます。
株投資で最もイージーな局面とは、暴落後の低迷相場での株買いです。
しかし、暴落するということは、
企業活動・財務状況に大きなダメージを被った銘柄が多く存在するということであり、
単に安いから株を買ってしまうと、倒産リスクを引き受けてしまうことになります。
この場合、株価指数ETFを選択したり、財務状況は必ずチェックすれば、
間違いを起こす確率はかなり減るでしょう。
暴落の株買いは「底を当てる」ことでは全くありません。
リーマンショックの弱気相場の時、
結果的に暴落したにも関わらず、途中は反発する局面があったのです。
そこをボトムだと考えた投資家は少なくなく、
損切りできず暴落をもろに被ったのです。
「底当て」は全くイージーではありませんでした。
また、上昇相場でのテーマ株なども上げられます。
上がってる途中で買えばどこでも利益になるような銘柄です。
買うのはよいかもしれません。
しかし、出口とリスク管理はシビアでなければいけません。
後追いの初心者や信用買いもたくさん入り、
ピークの予兆が出たところで一気に需給が悪化します。
お金を拾っているつもりの含み益が一転、大きな損となります。
FXでイージーな局面とはどういう局面でしょうか。
一つは、ファンダメンタルを背景としたトレンドの発生です。
「押し目や戻りでエントリーすれば、トレンドについていける」と、
イメージでは思えます。
しかしながら、トレンドの初期では、
トレンドに反する流れによる振り落としは頻繁にあります。
トレンドが発生したら発生したで、過熱感に注意しなければなりません。
こう考えると、一種の心理戦のように思えますが、
そうではなく、トレンドについていける売買プランと技術が必要ということです。
大きなトレンドはプランを全く立てず、
損切しない初心者(だからこそトレンドに結果的についていけるのですが)
も利益になる局面は確かにイージーですが、
そういう初心者は、市況が変われば利益を吐き出してしまいます。
イージーな局面でも、売買プランを立て、
なおかつ技術で利を取りに行くということが、
「運で得た一時的な利益ではない」ということになり、
投資・トレードに継続性と再現性を与えます。
イージーな局面を狙う理由として、大きな利益を狙えるからというのがあります。
この場合、ポジションを大きくできるから利益も大きくなるというのもありますが、
そもそもの期待勝率が高いため、安心してエントリーできることや、
期待値が大きいため、一定のリスクでも大きめの利益が出る、
ということが根底に存在することになります。
大事なのは、「イージーな局面は利益が出やすい」というよりも、
「トータルで勝ちやすくなる局面」だということです。
反対に、「難しい局面」とはどういうことでしょうか。
例えば、ヘッドライン相場になった場合です。
テクニカル無視で、値は毎日ニュースで突然動くような状況です。
ボラティリティが極端になくなった場合、値幅を取ることは難しくなります。
トレンドフォロアーにとってのレンジ相場が続く場合、
バリュー投資にとっての、株高割高が続く状態など、
「自分の売買スタイルとは合わない状況」というのも難しい局面と言えるでしょう。
監視銘柄・取引時間軸を増やして、
イージーな局面をなるべく取ろうとする試みもあります。
私はこれをしがちです。
この時、
「どの売買シグナルをスルーするか」
「自分は規律ある売買をしているか」
どうかが重要となります。
前者は、「精査するとイージーな局面でないから、
売買シグナルをスルーする」という判断が継続的に発生します。
やみくもに監視銘柄や取引時間軸を増やすと、
投資・トレードの判断負荷を上げることになり、
イージーな局面を狙っているつもりが、かえって混乱をする危険性があります。
これは手法により、売買シグナルを機械的に絞り込むか、
マイルールによって、狙う局面を定義することが必要です。
その局面局面で、場当たり的に判断を下すことは、
まったく優位性を利用していません。
後者は、手広く売買することによって生じる、
オーバートレードやリスク管理の甘さを強く律する必要性です。
「イージーな局面だから甘いトレードをしていいということは全くない」わけです。
また、どれだけの銘柄を監視していても、
忍耐強くチャンスを待つという必要性は発生し、
それができない投資家・トレーダーは利益を残すことができません。
以上のように考えると、「イージーな局面」とは
「勝率・期待値が大幅に引き上げられ、利益をトータルで残しやすい局面」
であると定義づけられます。
簡単に利益を得られるというのは半分幻想であることに注意が必要です。
初心者であれば、損切やリスク管理を行わないため、
甘い売買が故に利益になってしまいますが、
それゆえ、後に利益を吐き出してしまい、手元に利益が残りません。
試行錯誤中の中級者であれば、局面を認識したにもかかわらず、
エントリー・決済がうまく行かなかったり、
短期売買にこだわり、振り落としに合ってしまったり、
難しく考えてしまったゆえに入れなかったりと、
歯がゆい思いをするかもしれません。
上級者は、局面を利益に変えるリスク管理、売買プラン、技術を適切に選び、
継続性・再現性を取り込んでの売買ができるでしょう。
イージーな局面を取り切れない理想と現実のギャップは
投資・トレードの試行錯誤を繰り返し、学習曲線がスランプにある中級者が、
一番感じるのではないかと私は思います。
先ほど言及したように、「イージーな局面」は投資・トレードスタイルに依存し、
個々人によって異なるものです。
このブログ記事における「イージーな局面」の定義すら異なるかもしれません。
しかし、この局面がどういうものであるかを、
しっかり追及しておくことは、「難しい局面」を把握しておくことにもつながり、
メリハリのある、謙虚な売買をすることができるでしょう。
少なくとも、どんな局面でも利益を出そうとすることはせず、
「忍耐強く待つ」という自己規律を養うことができるのではと考えます。
追い風をうまくつかめるようになっていくというのは、
投資・トレードの中でも、運任せではなく、
成長できる余地のあるものなのではないでしょうか。