原資産の直接取引では得られない、
オプションの魅力は、セータによる利益ではないでしょうか。
つまり、対象オプションの時間価値の減少を利益に変えることです。
初心者の頃、オプションの中でぱっと見分かりやすく、
利益になりやすそうと感じたのは、
ショートストラングルとアイアンコンドルでした。
原資産のレンジをとらえてしまえば、
あとは時間価値の減少により、勝率高く利益を得られそうだったのです。
トレード経験をそれなりに行った今は、少し違います。
「できれば、セータ稼ぎで危ないポジションを持ち続けるのは避けたい」。
「積極的なオプション買いをするとき、セータ支払いリスクは引き受ける」。
という「セータは無視」というスタンスを心の定規としています。
「セータは無視」というのは、
私の尊敬するオプショントレーダーがそのブログでよく使う格言です。
オプションの売りで、安易なセータ稼ぎをすることを戒め、
オプションの買いでは、ポジションに強みがあるのであれば、
セータの損失を恐れないという意味であると、私は解釈しています。
セータを利益に変えたいと思った時、
それはオプションの売りのことを指し、
かなりのケースで満期勝負が混じってきます。
オプション価値がなくなるまでポジションを持ちたくなったり、
数日のセータ利益では満足できなかったり、
あるいはITMになりそうで満期勝負に持ち込んだり…。
満期勝負になると、取引が硬直的になります。
十分資金管理し、エッジがあればそれでも良いと思います。
しかし、オプション売りの大きな損失が出そうなときに、
満期で勝負するというのは平常心を失ってしまうかもしれません。
デルタヘッジやオプションの組み換えをしながら、
オプションの売りポジションを持つというスタイルがあります。
これは満期勝負とは異なり、途中の損益にトレーダーの対応が含まれます。
ただ、時間価値の減少を何もせずに利益とすることとはだいぶ異なり、
ポジション保有中はずっとち密にリスクを管理することが必要とされます。
もしセータで稼ぐのであれば、硬直的な満期勝負よりも、
ポジションを管理し続けるほうが、成功するのかもしれません。
ただ、流動性の少ない状況や、取引時間外の突発的なイベントによる、
暴力的な動きには対応しづらいリスクと状況は残ります。
オプション売りポジションは本質的に危険を引き受けなければなりません。
一方、オプションの買いでも「セータは無視」です。
市況の観察から、数日適用できる戦略を思いつき、ポジションを組成したとします。
それはオプションの買いであり、セータによる損失が生まれるとします。
一日一日の市況の変化では、ポジションのホールドをし続けるという選択をします。
これはセータの損失を受け入れても、
目的となる値動きと成果を待つということに他なりません。
セータをあえて無視することができなければ、
毎日の出血を恐れるだけで、リスクを取ることができなくなってしまいます。
視野も狭まり、一日ごとに市況に振り回され、
数日の長めのスパンが見れなくなってしまうでしょう。
スプレッド取引の場合、「セータは無視」に当てはまらないケースがあります。
例えば、デビッドスプレッドの場合は、順行した後満期まで保有することで、
セータにより、大きく利益を伸ばすことができる場合があります。
ロングバタフライは、確かにATMへ原資産が落ち着く満期勝負も狙いますが、
OTMなら安く組成できるメリットがあります。
また、ATMで組成することで、
ショートストラドルよりガンマヘッジの利いたポジションになり、
デルタヘッジがしやすいという面もあるでしょう。
(ガンマが小さいということはセータも小さいということではありますが)
「セータは無視」すべきなのか?
これは主張ではなく、トレードスタイルの振り返りを目的とした問いかけです。
リスクを十分に管理し、電車の走るレールの上にある五円玉を拾うことをしなければ、
セータは魅力的なリスクです。