Avocadoの投資・トレード日記

資金250万円からの投資・トレードの記録です。日々の成長を記録します。

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裁量取引をあいまいなままにしないための思考材料

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裁量取引と定量的なシステム売買は、よく比較されます。

 

後者はバックテストや定量的モデル作成により、

統計的に優位な結果得られた上でシステマチックに運用されるため、

裁量の不確実性が入りにくく、

機関投資家ヘッジファンドなどの大きな資金運用にも耐えられるとされています。

 

前者は非常にあやふやさが残ります。

大きな利益を稼いだ人のマネをしようとしても、できないことの方がほとんどです。

しかし、その人が相場に長く生き残っているのであれば、

彼の裁量取引には何かしら学ぶべきものがあるかもしれません。

ただ、注意すべきことがあります。

 

裁量トレードは一種のアクティブ運用と言えます。

運用者が運ではなく実力でそのリターンを勝ち取っていると定量的に証明するには、

年数が必要です。

優秀な運用者であっても7年程度の運用結果が必要となります。

 

個人投資家・トレーダーは、私も含め、

今も主観的なテクニカル分析を行っています。

これは手法化・マニュアル化され、

習熟することで誰でもある程度は再現できる形を取っているものもあります。

この形になれば手動でのバックテストは一応可能ではあります。

 

売買システムにはタイプがあります。

手法もそのタイプの内のどれかに当てはまり、専門化したと言えます。

そのタイプとは…

トレンドフォロー(ブレイクアウト押し目買い・戻り売り)

レンジトレード、綾戻し狙いの逆張り、トレンド転換、オーバーシュート、

典型チャートパターンなどです。

ただ一つの根拠ではダマシにあうことが増えるため、

より短い時間軸で精査するもの、ダマシ・振り落としを見越すもの、

エントリー可否に裁量判断を多分に含みつつ、

売買ルールはシンプルにエントリーするものなどがあります。

 

システム売買の古典的流派であるメカニカルトレードは、

ローソク足のデータを大元として、

プログラム可能な厳密なルールを作成・運用します。

FXのMT4・5のEAはメカニカルトレードに当てはまりますが、

その成功例は詐欺的な情報商材に埋もれてしまっています。

FX自動売買の成功を困難にさせる主な要因は以下が挙げられます。

 

・メカニカルトレードが成功しやすい日足・週足の時間軸ではなく、

もっと短い時間軸の時系列データのみで取引しているものがあるため。

・数多くの先物/CFDに分散させることなく、通貨のみを売買しているため

・AUDNZDなどのレンジが望めることを唯一のエッジとし、

ナンピン的な高勝率損大利小のトレードをしているものが多いため

という、主要な理由があるためです。

 

単純に「メカニカルトレードは定量的に扱えるので、

裁量トレードより優れている」とは言えない状況があります。

こちらはこちらで多くの困難・試行錯誤の上に成功があります。

 

成功した裁量取引を行うにはどうしたらよいのでしょうか。

(今回はファンダメンタルよりは、テクニカル分析を中心に考えます)

この時、以下の選択肢のどれかを選ぶことになるでしょう。

  1. カニカルではない、アート的なテクニカル分析で売買する
  2. 市況を裁量判断し、それに合うメカニカルなルールを選択する
  3. アート的なテクニカル分析であるが、極力手法化しシンプルにする

 

この中で最も迷いが多く発生する選択肢は1番目です。

そして、多くの勝てない裁量トレーダーはこの中にいます。

ギャンブルトレードと1番目の裁量トレードの違いは何でしょうか。

この違いを明確にする必要があります。

 

「そうではない。勝っている裁量トレーダーもいる」という反論はあります。

その場合でも、勝てない裁量トレーダーとは明確に何かが違うということになります。

それはテクニカル分析のスキルにあるのでしょうか、

ファンダメンタルも交えた複合的な判断にスキルがあるのでしょうか。

市況に乗じるのがうまいのでしょうか。

スキルが上達すれば再現性が高まるのでしょうか。

再現性が高まるということは逆説的に、

再現性のあるテクニカル分析の基準や手法があるということであり、

融通無碍に行っているわけではないということではないのでしょうか。

 

アート的なテクニカル分析には変数の多さという落とし穴があります。

移動平均一つにとっても、「期間」という変数があります。

MACDには3つの変数があります。

変数が多いほど、チャートの解釈の余地が増えます。

それは、3つの変数を統計的に優位に見せかける、

カーブフィッティングの可能性が高まるということもできますし、

変数につき、YES/NOの判断を下すとするならば、

3つの変数は2^3=8通りの結果に対して明確な想定をしていなければなりません。

解釈の余地が増えると、人間のキャパシティーをオーバーし、

全く正反対の解釈ができる可能性が増え、

分析結果の信頼性が担保できなくなります。

 

「インジケータは使ってない。ローソク足のみで判断している」という、

勝ち組トレーダーは少なくありません。

ローソク足なら変数が少なくなるのか?

それは議論の余地があります。

仮にメカニカルに定義した場合、複数の変数になる場合もあります。

また、エントリーする根拠にどれほどの定義と精査の揺らぎがあるか不明です。

しかし、解釈の余地が少なくなるほど、

分析の根拠をシンプル化しつつ、同時に細かいところを職人的に見ている、

という解釈はできるかもしれません。

これは3番目につながるものです。

 

2番目は、裁量判断をエントリー根拠ではなく市況判断に割り当てるということです。

市況判断は検証が非常に難しい部類のものです。

しかし、ファンダメンタルやセンチメントにエッジがあると感じられるのであれば、

統計的に適切なメカニカルルールは、

そのエッジから統計的に利益を引き出すツールとなるでしょう。

このスタイルはトレードの一つの究極形と言われています。

 

3番目は、1番目の落とし穴を排した裁量トレードです。

テクニカル分析のすべてを融通無碍に分析するのではなく、

明確な基準で分析するか、手法化する。

あるいは職人的に特化し、

特定の値動きに関して繊細で確度の高い分析をし、優位に立つということです。

これに2番目の市況判断を加えるかどうかは議論の余地があります。

 

裁量トレードは、検証されたものの上に築き上げられたものの方が、

堅牢性・一貫性・再現性に則りやすくなります。

以下に書く論法は本来統計的・定量的に検証するために用いられますが、

裁量判断というあいまいさが多分に含まれる領域にも、

かなり線引きをしてくれると思われますので、

参考文献を元に書いてみたいと思います。

 

「売買ルールが機能する」と結論付ける論法は何が正しいのでしょうか。

よくある間違いは以下の通りです。

 

前提1:売買ルールが正しければ、検証では利益が出るだろう

前提2:検証で利益が出た

不当な結論:よって売買ルールは正しい

 

もし利益が出なかった場合は以下の通りになります。

前提1:売買ルールが正しければ、検証では利益が出るだろう

前提2:検証で利益が出なかった

結論:よって売買ルールは間違っている

 

裁量手法のバックテストはこの論法で行われていることが少なくありません。

しかし、売買ルールの正しさを証明するための正しい論法は以下の通りです。

 

まず、「この売買ルールでは、利益が出ない」という仮説(帰無仮説)を立てます。

これを否定することで、売買ルールの正しさを証明します。

 

前提1:もし「この売買ルールでは、利益が出ない」という仮説が正しければ、

検証では利益が出ないだろう

前提2:検証では損することはなかった

妥当な結論:よって帰無仮説は間違いで、売買ルールは利益を生む

 

両者の売買ルールの正しさの証明方法は一見似ているようですが、

論理的には全く異なります。

帰無仮説を否定することが、統計的証明の必須条件となります。

 

これをそのまま裁量トレードに持ち込むことはできませんが、

以下の考え方はできるかと思います。

 

利益を上げる裁量の売買ルール・投資手法を発想したり、開発するときには、

「この売買ルールでは、利益が出ない」という帰無仮説を否定する必要があります。

これを統計的に検証することは、主観的な裁量取引ではできませんが、

帰無仮説の否定材料を考えることはできるでしょう。

 

例えば、ランダムの売買ルールよりも利益を上げられる。

インデックス投資などのベンチマークよりも利益を上げられる。

(最初から最後まで買い持ちしているよりも、

細かくロング→決済をした方がパフォーマンスを挙げられている)

以上のことは、帰無仮説を否定しやすくなります。

バリュー投資の場合、

「バリュー投資では利益が出ない」という帰無仮説は、

過去の株式市場を見ればかなりの確度で否定できます。

(「ただし、バリュートラップを除く」という但し書き付きで)

あなたが特定の投資手法を持っている場合、

どういう条件で帰無仮説を否定できるか考えることは非常に有意義です。

特に、先ほどのバリュートラップという但し書きや除外項目の具体性が、

帰無仮説を強く否定することに気づかれるかと思います。

投資手法そのものの理解は大事ですが、その足を引っ張るものを把握し、

それを避けるという運用は同様に大事であると考えられます。

 

短期売買の主観的テクニカル分析になるほど、

帰無仮説の否定は統計的にならざるを得なくなります。

(そして、その検証ができないことも)

 

ただ、先ほどのバリュー投資のバリュートラップの例のように、

売買ルールから、特定の期待値の低い状況を除外することで、

帰無仮説を否定しやすくすることは一案です。

例えば、

「利益が出る売買ルールでも、この状況・条件では利益が出ない」という

状況を具体化し、売買ルールからは除外します。

統計的には帰無仮説を否定する確度が高まります。

これは「何をすれば損をするか」ということを極力排除していく、

裁量トレードの発想法・改善法とも言えます。

注意しなければならないのは、

それがカーブフィッティングやデータマイニングバイアスに陥っていないことに

注意が必要です。

 

統計的に検証できない裁量手法に意味はないのでしょうか。

「検証して勝てなければ、相場で勝てないのだ」

という、理屈に対して、

尊敬しているトレーダーの一人である「あらなみ氏」は、

過去のブログで、一つの考え方を提示しています。

誤解の無いように伝えたいので、是非リンク先本文をご覧ください。

aranami718.blog.fc2.com

 

裁量取引もシステム売買も、

最後に問われるのは、

・それが期待値を持っているか(売買手法)

・長期的に見て破産しないか(資金管理)

・自分の運用を信じ切れるのかどうか(メンタル)

というところではないでしょうか。

項目のそれぞれは相互に支える関係です。

 

調子のいい時は簡単に自分の運用指針を信じられます。

しかし、調子の悪い時こそです。

裁量トレードでは、自分の裁量判断に疑問が生じて、

メンタルの維持が難しくなりますし、

システム売買では、エッジの消失や、隠れたリスク・障害を疑うことになります。

 

ここでは再現性ではなく、一段上の概念である「堅牢性」を求められています。

長く相場に居続けられるということは、

生き残るための堅牢な何かを持っているということなのです。

(市場の変化に対応できるというのも一つの堅牢性と言えるでしょう)

 

あなたの裁量判断・テクニカル分析には堅牢性がありますか。

(これは私も考え直さなければいけません)

 

参考文献

システムトレード基本と原則』

 

『計量アクティブ運用のすべて』

 

 

テクニカル分析の迷信』